【備中手延べ麺】そうめん・うどん・ひやむぎまで。岡山の麺いうたら、やっぱ手延じゃろ!

別注手延べ麺(麺蔵人 さるうどん)

備中手延麺(びっちゅう てのべめん)は岡山県・旧備中国の南西一帯で生産されている手延方式の麺の総称です。備中は岡山県の西部にあたります。

発祥地で、代表的な産地が現在の浅口市鴨方町(旧 浅口郡鴨方町)であることから「鴨方手延麺(かもがた てのべめん)」とも。

あるいは代表的な会社名や代表的商標である「かも川」から「かも川手延麺(かもがわ てのべめん)」とも呼ばれたりします。

むしろ日常ではこちらの呼称の方がしっくりくるかもしれません。

ただし生産業者の多くは鴨方町内に多いのですが、里庄町・矢掛町・笠岡市など周辺地域にも業者が多く所在。

また発祥地も、現在は鴨方町内といっても江戸時代当時は鴨方とは別村落でした。

こういった事情を考慮して「備中手延麺」の呼称も使われています。

当サイトでも「備中手延麺」の呼称で紹介したいと思います。

備中手延麺は、そうめんうどんひやむぎの3種が代表で、それぞれ「手延麺」の部分を「そうめん」「うどん」「ひやむぎ」に置き換えて総称として使用されます。

歴史

別注手延べ麺(麺蔵人 ぶっかけうどん)

備中における麺作りの歴史は古く、少なくとも9世紀には地域の名産となっていました。

この当時は「麦切(むぎきり)」と呼ばれる麺が、この地域より名産品として朝廷に献上されていたのです。

この麦切ですが、現在備中周辺では存在していません。

現在では東北などのごく一部地域に同名の麺類があるようですが、それと同じようなものなのかは分かりません。

少なくとも現在の備中手延麺とはちがった形式のものでしょう。

やがて江戸時代に転機がおとずれます。

文政年間(1818~1830年)に備中国 浅口郡 口林(くちばやし)村(現 里庄町里見)の原田敬助という人物が、伊勢詣での道中に播磨国で手延麺を賞味。

これをきっかけに原田は播磨より麺職人を浅口郡に招聘・移住させます。

その後地元の住民たちに麺製造の技術が伝わり、麺作りが周辺一帯に根付いていきました。

播磨といえば「揖保乃糸」の商標で知られる「播州そうめん」が有名です。

つまり備中と播磨は同じ麺作りの源流ということになります。

最初は小坂東(こさかひがし)(現 浅口市鴨方町小坂東)の杉谷川流域に技術者が住み、そこから麺作りが始まりました。

現在の浅口市鴨方町の小坂東が備中手延麺の事実上の発祥地ということです。

杉谷川は里見川の支流・鴨方川(鴨川)のさらに支流です。

これは杉谷川はこの地域の名峰である遙照山(ようしょうざん)山系に水源を持ち、その清流が麺作りに適していたからでしょう。

また備中の大動脈・高梁川流域で栽培された小麦から作られた良質の小麦粉が簡単に多く入手できる土地柄でした。

同様に瀬戸内海沿岸には塩田も多く、製塩が盛んでした。
良質の塩が多く簡単に入手できたという特徴も麺作りには有利です。

さらに現在も岡山は「晴れの国」と呼ばれるように、備中南部は気候が良く手延麺作りに最適の地でした。

このように、水・小麦・塩・天候と手延麺作りに適した土地柄であった備中南西部において手延麺作りが次第に広がり盛んになったのです。

その後、麺作りはさらに効率化がなされます。

江戸時代後期には人力による粉ひき作業から、水車の動力を生かして麺作りを行うように。

杉谷川には多くの水車を設置されます。
その水車が並ぶ風景は当時のこの地を代表する風景でした。

備中手延麺

明治になるとさらに状況が変化。

元は麺作り農家の副業が多くを占めていました。
それが麺作りを専業とする製麺業者が多く生まれていきます。

明治前期には「岡山県製粉製麺工業協同組合」。
そして明治中期には小川郷太郎が会長となる「備中そうめん組合」が結成されました。

その後麺作りにも近代化の波が押し寄せ、麺作りの機械化がなされた業者も登場。

最盛期には播磨に次ぐ全国2位の生産量となります。
約200業者が年間約10万〜12万箱の製造をするなど隆盛を極めました。

備中は播磨・小豆島と合わせて「瀬戸内の三大産地」「瀬戸内の三県物」として全国に知られました。

しかし近年は後継者不足による業者の減少、食文化の多様化による需要の低下、大量生産による廉価品の登場、他産地の奮闘などによりその生産量は減少しました。

最盛期ほどでは無いにせよ現在も全国トップクラスの生産地であることは変わりはありません。
しかしそれらの問題は現在でも続いており、今後の課題であるといえます。

現在は水車の姿はなく、かも川手延素麺という業者がシンボル的に設置した巨大水車が動いているのみです。

特徴

備中手延麺

備中手延麺の特徴は、弾力性のあるしっかりとしたコシ、ツルリとした喉越しの良さなめらかさ、さらに歯切れの良さです。

これらは古くからこだわってきた原材料と伝統的な製法にあります。

残念ながら岡山産の小麦粉は減少したため現在は北海道産を使用している業者が多くなっています。

岡山産も北海道産の小麦もコシに影響があるとされるグルテンが豊富であることが特徴です。

塩は岡山産、または瀬戸内産を使用してるところも多く、瀬戸内の塩はミネラル成分が多く含まれます。

これも手延麺の味に影響しているといわれます。

備中手延麺(かも川 素麺)

生産されている種類はそうめん・うどん・ひやむぎがメインで、生産量の大半をこの3種が占めます。

その他、少量ではありますが各業者が独自の手延製品をつくっています。
そば、ラーメン、焼きそば、ちゃんぽん麺、冷やし中華などです。

 

なお備中手延麺では「かも川」という商標が知られています。

少しややこしいですが「かも川」は会社名とブランド名が別々です。

会社名が「かも川」なのは「かも川手延素麺 株式会社」。

「かも川」のブランド名で商品を販売しているのは「岡山手延素麺 株式会社」になります。

 

鴨方を中心とする産地では、手延麺を製造する際にできる「バチ」と呼ばれる切れ端を安く購入し、いろんな料理に活用するという文化が根付いているといわれています。

味噌汁や赤ちゃんの離乳食にする家庭もあるそうです。

 

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生産

備中手延麺

前述の様に全盛期は播磨に次ぐ全国2位の産地でした。

現在はそれよりも縮小したものの、トップクラスの生産量を維持しています。

以下は農林水産省の米麦加工食品生産動向「乾めん類の都道府県別生産量の年度別調査」によります(なお同省は2010年以降は「乾めん類の都道府県別生産量の年度別調査」をおこなっていません)。

そうめん

手延そうめんは2003年までは全国5位をキープしていましたが、2004年に徳島県に追い抜かれました。

徳島県=半田そうめんと考えて良いと思いますが、この頃半田そうめんに製造業組合が出来たようで、一丸となって頑張った結果でしょう。

逆に言えば、これまで半田そうめんに組合が無かったのが不思議です…

また2006年頃を機に岡山県=備中そうめんは順位は6位をキープしているものの生産量自体は減少しています。

減少の理由はいろいろとあるのでしょうが、今後の課題です。

2003年 (平成15年)
順位 都道府県 産地区分名 生産量
(単位:小麦使用トン)
1 兵庫県 播州(播磨) 22,387
2 長崎県 島原、五島 17,771
3 香川県 小豆島 5.514
4 奈良県 三輪 4,243
5 岡山県 備中 2,644
6 徳島県 半田 2,569
7 富山県 大門 387
8 愛知県 和泉 378
9 三重県 大矢知 351
10 山口県 菊川 148
2006年 (平成18年)
順位 都道府県 産地区分名 生産量
(単位:小麦使用トン)
1 兵庫県 播州(播磨) 21,090
2 長崎県 島原、五島 10,328
3 奈良県 三輪 3,861
4 香川県 小豆島 2,947
5 徳島県 半田 2,930
6 岡山県 備中 1,259
7 愛知県 和泉 287
8 三重県 大矢知 280
9 熊本県 南関 146
10 福岡県 吉井(浮羽) 111
2009年 (平成21年)
順位 都道府県 産地区分名 生産量
(単位:小麦使用トン)
1 兵庫県 播州(播磨) 20,117
2 長崎県 島原、五島 13,566
3 奈良県 三輪 3,669
4 香川県 小豆島 2,817
5 徳島県 半田 2,664
6 岡山県 備中 1,636
7 愛知県 和泉 186
8 宮城県 大矢知 179
9 熊本県 南関 157
10 愛媛県 松山 120

うどん

手延うどんは何と全国堂々の1位!!

でも実際はあまり知られていないのです。
これは残念な事実。

地元の人でも手延うどんはよく食べても、手延うどん生産が全国1位ということを知っている人はどれくらいいるでしょう?

世間では手延うどんとしては秋田県の稲庭、長崎県の五島、富山県の氷見などが有名です。

しかし生産量1位は意外にも岡山県の備中だったのです!

備中手延麺

岡山県=備中は2004年にいったん長崎県に抜かれ2位となります。

長崎県には島原と五島の2ヶ所の手延麺産地がありますが、手延うどんは五島の生産量が多く有名なので、この場合の長崎県=五島と考えて良いと思います。

データ上では生産量が2003年の1,792トンから2006年には620トンとなっています。

これから備中の生産量が落ち込んだことによる順位の低下とみえます。

その後、備中は生産を盛り返し2007年に再び1位に返り咲きました。

なおそうめん・ひやむぎでは圧倒的な生産量を誇る播磨(播州)ですが、うどんに関してはあまり生産がされていないようです。 これは意外でした(それでも10位以内ですが)。

2003年 (平成15年)
順位 都道府県 産地区分名 生産量
(単位:小麦使用トン)
1 岡山県 備中 1,792
2 長崎県 五島、島原 1,332
3 愛知県 和泉 981
4 奈良県 三輪 403
5 秋田県 稲庭 363
6 三重県 大矢知 313
7 兵庫県 播州(播磨) 214
8 香川県 小豆島 185
9 北海道 下川 141
10 富山県 氷見、大門 125
2006年 (平成18年)
順位 都道府県 産地区分名 生産量
(単位:小麦使用トン)
1 長崎県 五島、島原 1,110
2 岡山県 備中 620
3 愛知県 和泉 328
4 秋田県 稲庭 311
5 三重県 大矢知 197
6 北海道 下川 111
6 富山県 氷見、大門 111
8 兵庫県 播州(播磨) 109
9 福島県 三春など 95
10 香川県 小豆島 84
2009年 (平成21年)
順位 都道府県 産地区分名 生産量
(単位:小麦使用トン)
1 岡山県 備中 1,559
2 長崎県 五島、島原 1,060
3 愛知県 和泉 331
4 秋田県 稲庭 243
5 三重県 大矢知 194
6 福島県 三春ほか 94
7 香川県 小豆島 89
8 富山県 氷見、大門 65
9 北海道 下川 61
10 兵庫 播州(播磨) 52

ひやむぎ

手延ひやむぎは岡山県=備中の生産量は全国3位です!

とはいっても1位の兵庫県=播磨が圧倒的なので、堂々の3位というわけではないのですが…

またここで特筆すべきは2位の三重県。

手延そうめんやうどんでは9位あたりに甘んじていた三重県ですが、ひやむぎでは一気にトップクラスの生産量。

これは備中が手延うどん1位なのと同様にあまり知られていない事実なのではないでしょうか。

三重県の手延麺は東部の四日市市や三重郡あたりで生産される「大矢知(おおやち)手延麺」。

この場合、三重県=大矢知ということでしょう。

大矢知ひやむぎにも注目です!

2003年 (平成15年)
順位 都道府県 産地区分名 生産量
(単位:小麦使用トン)
1 兵庫県 播州(播磨) 1,872
2 三重県 大矢知 900
3 岡山県 備中 366
4 愛知県 和泉 288
5 静岡県 遠江(遠州・浜松) 140
6 福島県 三春ほか 114
7 香川県 小豆島 89
8 北海道 下川 76
9 長崎県 島原、五島 50
10 富山県 氷見、大門 28
2006年 (平成18年)
順位 都道府県 産地区分名 生産量
(単位:小麦使用トン)
1 兵庫県 播州(播磨) 2,065
2 三重県 大矢知 547
3 岡山県 備中 317
4 愛知県 和泉 168
5 福島県 三春ほか 125
6 長崎県 島原、五島 47
7 香川県 小豆島 31
8 奈良県 三輪 21
9 富山県 大門 20
10 北海道 下川 17
2009年 (平成21年)
順位 都道府県 産地区分名 生産量
(単位:小麦使用トン)
1 兵庫県 播州(播磨) 2,205
2 三重県 大矢知 530
3 岡山県 備中 215
4 福島県 三春ほか 120
5 愛知県 和泉 86
6 香川県 小豆島 35
7 長崎県 島原、五島 21
7 富山県 大門 21
9 秋田県 稲庭 10
9 北海道 下川 10

主要産地

  • 浅口市鴨方町
  • 浅口郡里庄町
  • 小田郡矢掛町
  • 笠岡市

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イベントなど

大手製麺業者である「かも川手延素麺」と「岡山手延素麺」の2社はそれぞれ自社の直売所において年数回、麺祭のような催しを行っています。

両イベントとも現地で大量のB級品を格安で購入できます。

また現地で調理されたそうめんやうどんなどの料理も食べられます。
夏期には流しそうめんも!!

さらには浅口市の商工会主催の手延麺祭も開催されていて、まさに鴨方は手延麺の町として賑わっています。

なおこちら商工会の祭は入場料が必要となります。

かも川手延索麵 直売所における麺祭りでのB級品販売

かも川手延索麵 直売所における麺祭りでのB級品販売

「かも川手延素麺」のイベントでは、手延麺をつくるときにできる副産物である切れ端「バチ」を使ったお好み焼き「ばちおこ(バチ入りお好み焼き)」も販売されています。

鴨方のご当地グルメとして来場者に人気です。

人気の「ばちおこ」

人気の「ばちおこ」

1980年代後半、昭和末期から平成初期にかけての時代に全国各地で博覧会ブームがおきました。

このときに当時の浅口郡鴨方町は製麺が盛んということで「めん博」を開催しています。

主な製造販売業者

かも川手延素麺 直売所 「麺蔵人」

かも川手延素麺 直売所 「麺蔵人」

鴨方

里庄

岡山手延素麺

岡山手延素麺 直売所も併設

矢掛

笠岡

食べられる主な飲食店

鴨方

  • 麺蔵人 (浅口市鴨方町小坂東1981)
  • 宮田製麺 試麺館 (浅口市鴨方町鴨方2206-2)
  • かもがた町家公園 まちや亭 (浅口市鴨方町鴨方240)

里庄

  • 岡山手延素麺 株式会社 直売所 (浅口郡里庄町新庄1887-1)
  • へんこつうどん 遙竹庵 (浅口郡里庄町里見4248-3)
  • Macaret(マカレ)  (浅口郡里庄町新庄2998)

矢掛

  • 喫茶 本陣 (矢掛町観光協会 本陣会館内) (小田郡矢掛町矢掛3078-8)
  • やかげ茶屋 (やかげ町家交流館) (小田郡矢掛町矢掛2639)
  • 花鳥風月 (矢掛屋) (小田郡矢掛町矢掛3050-1)

まとめとおすすめポイント

古い歴史をもつ備中手延麺ですが、なんといってもモチモチとしたコシのある食感とツルリとした喉越しの良さが両立しているのがおいしさのポイントです!

真夏の暑いときは冷やして、真冬の熱いときはアツアツで、ぜひご賞味ください!

きっと虜になることと思います。

 

また手延麺は基本的に多くが乾麺で流通しています。

ですので保存性の良さがメリットです!

私の実家や親戚筋、近所の家などでは常に手延麺がストックされておりました。

現在も私の家ではストックしております。

いつでも食べたいときにサッと作れるのが手延麺の魅力です。

冷凍麺も同じですが、冷凍麺は冷凍庫の限られたスペースを占領してしまいます。

ひとり暮らしをしていたときも実家から持って帰った手延麺のストックが大活躍でした!

 

最後に個人的に良いと思った情報をひとつ。

備中の手延べうどんを焼きうどんにしてみました。

焼きうどんにするなら備中手延べうどんが一番合います! 手打ちうどんよりも。
試してみてください!!

 

 

参考資料

  •  『岡山県大百科事典』山陽新聞社
  • 『麺博士』かも川手延素麺株式会社制作・配布
  • 食費産業センター『「本場の本物」地域食品ブランド表示基準』
  • 農林水産省『米麦加工食品生産動向「乾めん類の都道府県別生産量の年度別調査」』