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【高梁銘菓 ゆべし(柚餅子)】江戸時代の備中松山藩 献上菓子!歴史ある伝統銘菓

ゆべし(高梁) 土屋天任堂

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岡山県高梁市。岡山県西部にあたる備中国、その中部よりやや北寄りに位置します。

かつて城下町だった同市中心部 “備中松山“は小京都として知られています。今も古い町並みが残り、古い寺社もあります。

後背の臥牛山(がぎゅうざん)の山上には、日本百名城の一つで日本三大山城のひとつ、現存天守を持つ「備中松山城 (高梁城)」がそびえます。
最近では雲海に城郭が浮かぶ光景で有名になりました。

その高梁の土産物の定番が、松山銘菓・郷土菓子として江戸時代より地元で愛されている『ゆべし(柚餅子)』です。

OMIYA!』などのメディアで郷土文化ライター、銘菓・土産菓子ライターとして活動する筆者アサノが、備中高梁(松山)の伝統銘菓・ゆべしの歴史と特徴を紹介します!

ゆべしとは

ゆべし(高梁) 土屋天任堂 包みゆべし

土屋天任堂の包みゆべし

ゆべしは餅米を使った餅菓子で、中に柚子が練りこんであります。
全国各所にゆべしが郷土菓子として根付いている土地があります
その土地により様々な形状・特徴をもったゆべしが存在しているのが興味深いです。

その発祥は定かではありませんが、平安時代後期の源平合戦の頃にはゆべしは保存食として食されていたといわれています。

江戸時代になると和菓子として進化。そして現在に至ります。

高梁銘菓 ゆべしの歴史

ゆべし(高梁) 土屋天任堂 結びゆべし

土屋天任堂の結びゆべし

高梁市中心部はかつて備中松山城の城下町でした。

松山城がいつ建造されたのかは不明ですが、城下町は戦国時代に整備されました。
江戸時代初頭には幕府領(天領)、その後は幕末まで備中松山藩(高梁藩)の領地で、統治拠点となります。

1800年代の板倉勝職(いたくら かつつね)が松山藩主の時代に、今も残る和菓子店「天任堂」が板倉氏にゆべしを献上したことから、備中松山(高梁)にゆべしが郷土菓子として定着していったと伝わっています。

江戸時代はじめの天領の時代に備中代官として小堀遠州が松山城主となりました。
小堀遠州は茶の湯文化を高梁に定着させたといわれます。
そのバックボーンがあったからこそ、ゆべしが高梁の地に定着したのかもしれません。

江戸時代後期に松山藩の財政が悪化すると、その建て直しを図った山田方谷(やまだ ほうこく)は、財政再建のためにゆべしの生産を奨励したとか。

また明治時代には文豪・永井荷風が高梁のゆべしを大変好んだという記録もあります。

その後ゆべしの製造元は増え、今でも数社が高梁の地でゆべしを製造・販売。
現在では高梁銘菓として土産物・贈答品の定番となりました。

高梁銘菓 ゆべしの特徴

もち米と砂糖や水飴、細かく切り刻んだ柚子の皮をあわせて煮詰めます。
そして乾燥させて表面に砂糖をまぶして出来あがります。
柚子の香りがとても心地よい一品です。

形状もバリエーションがあります。

ゆべし(高梁) 包みゆべし基本形のカード状をした「包みゆべし」。

ゆべし(高梁) 結びゆべし

ひも状にしたものを結んだ「結びゆべし」。

ゆべし(高梁) 切りゆべし

サイコロ状や短冊状に切り刻んだ「切りゆべし」。

その他にも柚子の形をかたどったかのような「丸ゆべし」などもあります。

もともと備中国、特に高梁周辺は古くから柚子の栽培が盛んであったことから柚子を用いた菓子が作られたといわれます。
現在では柚子の生産はかなり減少しましたが、今でも地元産の柚子を中心に使用したゆべしを提供するお店も存在。

代表的な店舗

現在ゆべしの製造元として代表的なのは下記2社です。

・土屋天任堂

・遠州堂

まとめ

ゆべし(高梁) 土屋天任堂 切りゆべし

土屋天任堂の切りゆべし

ゆべしは求肥のようなモチモチとした食感がたまりません!
そして香り高い柚子の風味。
ほんのりとした甘さ。
きっと好きな人も多いはず。

高梁市中心部は城下町として古い歴史があります。
今でも石火矢町など武家屋敷の面影を残す町並みなど、古い建造物も残ります。

小京都」ととして古くから観光地となっています。

また備中松山城は現存する城郭の中でもっとも標高の高い位置にあることで有名。

そして備中松山城は霧の中に城が浮かんでいるように見えるいわゆる「天空の城」としても古くから知られています。

兵庫県の竹田城が「天空の城」として脚光を浴びましたが、その影響で備中松山城へも観光客が増加しているようです。
こちらは現存天守ですからね。より天空の城っぽくなるでしょう。

観光地・高梁においでの際は是非ゆべしを食べてみてください。
ちなみに岡山県の主要駅などでも買えるところがあります。

補足:県内にもうひとつゆべしの産地がある

実は岡山県にはもうひとつゆべしの名産地があります。
同じ備中地方の南部に位置する宿場町・小田郡矢掛町です。
こちらはまた違った背景があるようです。

また両市町の間にある総社市では郷土菓子とまではいきませんが、同市の土産菓子の定番『雪舟もなか』製造元・平川が『天柱』という商品名の棒状ゆべしを製造販売し、雪舟もなかと並ぶ人気商品となっています。

 

参考資料

  • 備中高梁ぶらんど 公式サイト
  • 西日本城郭研究会『西日本 城と城下町 ベストガイド』メイツ出版
  • 土屋天任堂 ゆべし 付属説明紙