天瀬(岡山市北区) 〜 地名の由来は「海辺」。古代は沿岸地区だった!

天瀬(あませ)は岡山市北区の町丁です。

表町(おもてちょう)の旧国道2号線を挟んで南側にあたります。

以前は岡山市民病院があったところです(現在は北長瀬駅前に移転)。

実はこの地名、岡山城下ができる前よりあったようです。

古い地名の由来は諸説あります。
あくまで当サイトでの見解です。

天瀬はこんなところ

天瀬は岡山市街地の南部、旭川西岸に位置しています。
前述の通り、表町の旧国道2号線を挟んだ南側です。
移転前の岡山市民病院の所在地でした。

東には京橋南町(きょうばしみなみまち)、西には東中央町(ひがしちゅうおうちょう)、南に天瀬南町(あませみなみまち)と隣接。

岡山城下町時代は岡山城「三の曲輪(さんのくるわ)」の南部を占めるかなり広い地域でした。

元は城下町建設以前からそのあたり一帯の通称のような地名だったようです。

字喜多秀家が城主になった戦国時代後期、侍屋敷が置かれて侍町となります。

実は現在の天瀬は城下時代に天瀬と呼ばれていた地域の大部分と紺屋町(こんやちょう)と呼ばれていた地域を合わせたエリアとなっています。
旧紺屋町は現在の天瀬の南部となります。

城下時代は岡山城の外堀が現 柳川筋を南下して天瀬の西南角で東に曲がり、紺屋町との間を旭川に向かって東へ続いていました。

天瀬から紺屋町との間に橋が架かり、天瀬側に「紺屋町口」という名の番所 と「紺屋町御門」という門が設置されていました。

昭和40年の町区改訂で旧 天瀬の北部の一部は現在の表町の一部となりました。 残る天瀬と旧 紺屋町が一つとなって新しい天瀬となり、現在に至ります。

なお天瀬の南隣にある天瀬南町は町区改訂で、天瀬の南にあるということでつけられた町名です。 歴史的に同じ天瀬だったわけではありません。

地名の由来

「海辺」を意味。古代は海に面していた

天瀬の地名由来は諸説あります。

「旭川に尼が流された地」という説。天の川の説話と同じような事が起こった場所だという説。雨の日に大きな川音がするという説など。

しかしいずれも漢字の字面から作られた説話だと私は思います。

当サイトでは古い地名は全ての漢字が日本語の意味と対応されているわけでなく、当て字である可能性が高いと考えています。

天瀬はいつからある名前なのかはっきりしません。 少なくとも岡山城下建設よりは古くからあります。
もし古代からあるとしたら、備前国御野郡(みののこおり)出石郷(いづしごう)の一部であったと推測されます。

古代の郡名や郷名では「アマ」がつく名はチラホラあります。
漢字は「海」「天」「甘」などが当てられているようです。

古代の「アマ」がつく名の意味は2通りのパターンがあります。
ひとつは崖地を意味する「アバ」が変化したもの。
もうひとつは海を意味する「アマ」

現 天瀬の周辺を見ていると平地で崖地やその跡の様なものは見当たりません。
強いて言えば岡山・石山・天神山が当地と同じ出石郷内となります。
しかし崖地というほどの場所ではありません。

そうなると後者の「海」説が濃厚

実はかつて旧 岡山市民病院の工事が行われた際、弥生時代の遺跡が発掘されています(天瀬遺跡)。 天瀬だけでなく周辺の町丁にも至る遺跡でした。
この遺跡は港の機能を持った集落跡とされ、祭祀用の土器なども発見されています。
天瀬から西方にある鹿田あたりからも同様の遺跡が発見されています。

このあたりは旭川のデルタ地帯(三角州)にあたる地域です。
当時の旭川デルタの南限=海岸線がこのあたりだったと推定できます。

また中世の有力荘園として鹿田荘がありました。
鹿田荘もまたこの辺り一帯の沿岸部であったと思われます。

このことから天瀬の地名の由来は「天瀬=海瀬(あませ)」で、海辺の地、海岸、沿岸地帯を意味していたと考えられます。

なお「瀬」は現在と同じく沿岸・海岸、または水深の浅い水域の意味と思われます。

デルタ地帯はその後徐々に南へ南へ干拓が進められていきます。
そして現代と同じように天瀬は海から離れてしまいました。

紺屋町はその名の通り紺屋(染色屋)から

城下時代に現 天瀬南部の紺屋町は染色業者が集住していた職人町でありました。
町名の由来はその名の通り、紺屋(染色業者)が多くいたことが由来です。

まとめ

岡山城下を経て現在は中心市街の一角。
ですが古い地名が残されているのは貴重と思います!

 

参考資料

  •  『日本歴史地名体系三四巻 岡山県の地名』平凡社
  •  『岡山県大百科事典』山陽新聞社
  •  巌津政右衛門 『岡山地名事典』日本文教出版社
  • 岡山大学付属図書館 『絵図で歩く岡山城下町』吉備人出版
  • 谷淵陽一『岡山市の地名由来』吉備人出版
  • 楠原佑介ほか『古代地名語源辞典』東京堂出版
  • 池邊彌『和名類聚抄郷名考証』吉川弘文館
古い地名の由来は諸説あります。
あくまで当サイトでの見解です。